小林玲子さんの「涅槃図」の絵解き・3

白い沙羅双樹の花の下で


小林玲子さんが、「涅槃図」を題材に絵解きした口演が
DVD化されています。
(長野・善光寺世尊院釈迦堂所蔵の「釈迦涅槃図」を絵解きしたもの。
台本は、小林一郎さんとご夫婦で制作。)
→方丈堂出版HPの紹介ページ

また、このDVDは、長野郷土史研究会のHPでも取り扱っておられます。
→長野郷土史研究会のHP
紹介ページ
くわしくは、こちらを見ていただくと、絵解きの魅力の一端がわかるかと思います。

ただ、やはりDVDでは、生の口演の醍醐味は伝わりにくいもの。
機会があれば、ナマのライブの「絵解き」を体験してみることを
ぜひともオススメします。

以下、口演の内容の一部をダイジェストとして紹介してみたいと思います。

こんなかたちで取り上げることをオーケーして下さった小林玲子さん、
ありがとうございます!
また、寺宝の「大涅槃図」の撮影と掲載をご許可して下さった
常保寺のご住職・小澤秀孝さん、ありがとうございます!
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さて。
クシナガラ(クシナーラー)へとやって来たブッダは、
サーラの樹(沙羅双樹)の林の間にしつらえられた床に横になります。
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絵の中央に描かれたブッダ(お釈迦さま)の姿は、金色です。

ブッダは、クシナガラへ入る直前、プックサ(福貴)という人に会い、
金色の衣の寄進を受けるのですが、
それを身につけた彼の肌は、その金色の衣が色あせて見えるくらい、
すでに金色に輝いていたと「大パリニッバーナ経」に語られています。

ここで、修行完成者(=如来)は、悟りを開いた時と
涅槃(ニルヴァーナ)に入る時の2回、
肌がきよらかに輝くと説明されています。
今まさに命の炎が尽きんとしているブッダの体は金色にまばゆい。

後年になると、ふだんから金色に光っていたと語られるようになり、
一般的にブッダは金色で描かれることが多くなります。
涅槃図のブッダは、特に金色で描かれるようです。

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かくてブッダは、弟子たちに

「もろもろの事象は過ぎ去るものである。
怠ることなく修行を完成なさい」
(1)
(=諸行は無常である。怠ることなくつとめよ)

と最後の言葉を告げて涅槃に入ります。

このとき、一説には2月15日。
満月の夜だったそうです。
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そしてこの瞬間、大地が揺れ、雷鳴が轟き、
沙羅双樹の樹は、時機でもないのに、いっせいに白い花を開く。
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「大パリニッバーナ経」では、床は、サーラの樹(沙羅双樹)の2本の木の間に
しつらえられたことになっています。
が、他の文献(「釈迦如来涅槃像勧喩録」)などでは、8本の木の間とされ、
ブッダの説法が終わったとたん、4本が枯れます。
が、他の4本は、いっそう青々と繁る。

これは「四枯四栄(しこしえい)」といい、
ブッダの肉体は涅槃(ニルヴァーナ)に入っても(四枯)、
その説いた法は後世に残って栄える(四栄)ことをあらわしているのだそうです。
(こちら常保寺の「大涅槃図」でも、
4本が白く枯れ、4本が緑に描かれていますね。)

また、沙羅双樹は花をつけた後、
全部の樹が枯れ果てて真っ白になったともいわれているそうです。
白く化した林は、遠くから見ると、まるで白い鶴が群れているようだったとか。
そのため、この林は「鶴林(かくりん)」と呼ばれるようになる。
この故事は、兵庫の名刹「鶴林寺」の由来ともなっています。
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そうして「絵解き」では、「平家物語」の冒頭の部分がしみじみと語られます。

「祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」


──「もろもろの事象は過ぎ去るものである。」
諸行無常。
感慨深い場面です。

時ならずして満開となった沙羅双樹の花は、
はらはらと散り、ブッダの体に降りそそぎます。

そしてこれは「涅槃図」にはないのですが、「大パリニッバーナ経」(1)によれば、
さらにどこからともなく虚空から、
マンダーラヴァ華(曼荼羅華、デイコの木の花)が現われ、はらはらと舞い降りる。
そして、おそらくビャクダン(白檀)と思われるセンダン(栴檀)の
たおやかな香りの粉が舞い落ちて、ブッダの体に降りそそぎます。
沙羅双樹のまっ白な花と、デイコのまっ赤な花。
美しい表現だと思います。

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《引用・参考文献》
(1)中村元訳「ブッダ最後の旅 〜大パリニッバーナ経〜」岩波文庫
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by kamishibaiya | 2012-02-03 08:47 | 絵を見せて語るメディア | Comments(0)

「ポレポレ」は、スワヒリ語で「のんびり、ゆっくり」という意味です。紙芝居屋のそんな日々。


by kamishibaiya