小林玲子さんの「涅槃図」の絵解き・5

駆けつけて来た神々


さて人々がクシナガラへ駆けつけて来たとき、
実はその時すでに、ふつうの人間の目には見えないものの、
世界中の神霊たちがこの地へやって来ていました。

沙羅双樹の林の周囲12ヨージャナ(由旬)=約86km四方を取り囲み、
うさぎの毛の隙き間もないほどにひしめき合っていたそうです(1)

そのようすが、「涅槃図」に描かれています。
f0223055_10391314.jpg

f0223055_10475188.jpg

よく知られている仏教関連の神々が登場していて、
さながらオールスターズ総出演。

「涅槃図」の中には名前を書き込んでいるものもあるのですが、
大半は、こちらの「大涅槃図」のように名前が書いてないため、誰が誰だかわかりませんね。
梵天や帝釈天といった天部の神々もいらっしゃると思います。

仏法を守護する八部衆の姿も見えます。
あくまでも筆者の推定でみていくと、
蛇を頭に載せて嘆いているのは、
摩睺羅伽(まこらが)〈=摩睺羅(まごら)ともいう〉だと思われます。
三面六臂(3つの顔に6本の腕)の真っ赤な姿は阿修羅でしょう。
象の冠をつけている青い肌は、五部浄(ごぶじょう)。
f0223055_9243338.jpg

下の絵の部分、鳥の顔をしているのは、迦楼羅(かるら)、
獅子の冠をつけて涙をぬぐっているのは、乾闥婆(けんだつば)、
額に縦の目をつけて3つの目を持ち、頭に角をはやして合掌しているのは、
おそらく緊那羅(きんなら)かと思われます。
緊那羅は、頭の中央に角が1本なのだそうですが、この絵では2本にも見えるので
違うかもしれません。
f0223055_9271495.jpg

下の絵の部分は、同じく、仏法を守護する金剛力士。
よくお寺の入口でお寺を守っていらっしゃる仁王さまです。
口を結んだ「吽(うん)」の形の金剛力士は、
全体画面の右がわにおわします。
f0223055_1127231.jpg

口を開いた「阿(あ)」の形の金剛力士は、
悲嘆のあまり、全体画面の左がわで地面を転げています。
f0223055_11324176.jpg


また、もちろん、文殊菩薩や普賢菩薩らの菩薩たちもやって来ていました。
ブッダの床の近くにおられるのが、地蔵菩薩です。

「絵解き」では、涅槃に入りゆくブッダが、地蔵菩薩に語ります。

自分の死後、56億7000万年後、
この世界を救うため、弥勒菩薩が出現する。
それまでおまえは、
如来(修行完成者)とはならずに、
菩薩(修行者)のままで、
苦しむ衆生(しゅじょう=生命あるすべてのもの)を救いさない、と。
f0223055_11555137.jpg

そうしてブッダから託された地蔵菩薩は、
どこにでもいて、わたしたち衆生を助けてくれるのだそうです。

もしも不幸にして、将来、地獄の方へ滞在しなければならないようなことになったら、
あちらでわたしたちを助けてくれるのもお地蔵さまです。

地蔵菩薩は、超越者とはならずに、
低俗な問題で悩んだり、いじけたりもする
愚かなわたしたちのそばに寄り添ってくれる存在なんですね。

f0223055_13263969.gif



《引用・参考文献》
(1)中村元訳「ブッダ最後の旅 〜大パリニッバーナ経〜」岩波文庫








[PR]
by kamishibaiya | 2012-02-05 00:00 | 絵を見せて語るメディア | Comments(0)

「ポレポレ」は、スワヒリ語で「のんびり、ゆっくり」という意味です。紙芝居屋のそんな日々。


by kamishibaiya