右か左か、明日はどっちだ?・09

f0223055_1254426.gifひとつの仮説


さて、これまで、
右から左へ(→)の方向が「すすむ」で、未来は左にあるのか。
それとも、左から右へ(←)の方向が「すすむ」で、未来は右にあるのか。
もしそういう無意識的な傾向があるとすれば、それは人間の生理的なものに根ざしているのか、
それとも文化によって異なるものなのか。
──ということを、右往左往しながら、あれこれ勉強して考えてみました。

その結果──。
「わからない」というのが、筆者の結論です。
さんざん回り道をして、結局「わからない」というのも情けない話ですが。

が、わからないなりに、考えてみたひとつの仮説(笑)があります。
まあ、仮説というほど、たいそうなものではないのですが、
以下にちょっと整理してみたいと思います。

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グリュンワルドやスーザン・バッハといった心理学の専門家は、象徴的に、
左から右へ(→)の方向が「すすむ」であり、未来があるとしています。
それは、大半の人々──特に欧米の人々にあてはまると考えられており、
心理テストや臨床の場にも応用されています。

図にすると、下の通りです。

▼グリュンワルドの空間図式をもとに、横軸だけを取り出して作成
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一方、カンディンスキーなど一部の人々や、また一部の日本文化には、その逆
──つまり、右から左へ(←)の方向が「すすむ」であり、未来があるとする感じ方があります。

その違いは、脳機能などの生理的なものなのか、
文化によるものなのか、文字を読み書きする方向の違いによるものなのか、
それとも個人的な感性によるものなのかは、はっきりとわかりません。
そのあたりは、専門家の方がこれからはっきりとさせてくれるかもしれません。

筆者が思う仮説というのは、紙芝居や絵本限定です。
連続する絵(映像)によって物語を表現するメディアにおいてのみの話です。
つまり、絵本や、マンガ。
絵巻や、冊子、草子。
そして紙芝居などといったメディアでは、
象徴の図式が変わってくるのではないかということです。

こうしたメディアでは、物語が展開する方向が自然に定められています。
くりひろげられるメディアの世界の中ではその力が強烈なので、
たとえ、仮に、人が生理的にあるいは文化的に、右へ向かおうとする性向を持っていたとしても、
もしくは、仮に、左へ向かおうとする性向を持っていたとしても、
ちょうど、強力な磁場がはたらいている空間では、重力さえ無力に感じられるように、
その方向に引っぱられてしまう。

そして引っぱられるがゆえに、象徴の図式が塗り替えられるように思うのです。
つまり、こんなふうに。

物語や絵が右向きに展開するメディアの場合
■文章が横書きの絵本・本・冊子(左開き・左綴じ)
■台詞が横書きのマンガ(左開き・左綴じ=欧米のコミックなど)
■コンピューター・ゲーム
■ウェブなどの電子メディア

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これは、グリュンワルドの空間図式の横軸そのものです。
が、しかし、展開する方向が左向きになると、
これとは逆の、下図のようになると思われるのです。

物語や絵が左向きに展開するメディアの場合
■文章が縦書きの絵本・本・冊子・絵草紙(右開き・右綴じ)
■台詞が縦書きのマンガ(右開き・右綴じ=日本の一般的なコミック)
■絵巻
■紙芝居

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「順勝手」「逆勝手」というのは、もともと「絵巻」で使われていた言葉です。
日本の絵巻では、左(←)に進むという方向が明確に決まっています。
その流れに順(したが)う表現を「順勝手」といい、
その流れに逆らう表現を「逆勝手」といいます。

※絵巻では、「順勝手となる構図」のことを、慣用的に「順勝手」と呼び、
「逆勝手となる構図」のことを「逆勝手」と呼ぶこともあるようです。
これについては、後述しようと思います
(後述:「斜線構図の順勝手と逆勝手」)。

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たとえば、登場人物が右を向いているか、左を向いているかだけで、
「順勝手」「逆勝手」の表現となることもあります。

左(←)に進む「絵巻」において、左を向いている人物は「順勝手」。
主人公の多くは、「順勝手」に描かれます。
それに対して逆の右(→)を向いている人物──つまり「逆勝手」の人物が登場することは、
主人公が出会う相手であったり、あるいは敵対する人物であったりします。

こうした「空間的な表現」は、小さい子どもたちを対象とする「絵本」では、
特にしっかりと配慮されています。

たとえば、右(→)に進む「絵本」において、右を向いている人物は「順勝手」。
物語には、「行って帰ってくる」という構造のものが多いのですが、
その「行く」ときに、主人公は、右(→)を向く「順勝手」で描かれます。
そして「帰る」ときに、主人公は、左(←)を向く「逆勝手」で描かれることが多い。

そして、これら「空間的な表現」とともに、
「順勝手」「逆勝手」は、「心理的な表現」として使われることがあります。
そのとき、上図のような空間象徴が成り立っていると思われることが多いのです。

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もっとも、「順勝手」「逆勝手」という言葉がなくても、
そうした表現は、自然発生的に、無意識的に、幅広く、使われているものです。
たとえば、マンガや、海外の絵本などでも効果的に使われていて、
それが物語をよりおもしろいものに見せています。

だから仮説といっても、「何を今さら」という気もします。
これらメディアに親しんでいる読者(観客)にとっては、当たり前のことかもしれません。
が、改めて、
「順勝手」「逆勝手」の表現の具体例を見ていきたいと思います。

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by kamishibaiya | 2012-06-30 06:25 | 紙芝居/絵を描く | Comments(0)